炎症性腸疾患患者に対するチオプリン製剤使用に関する通知(NUDT15遺伝子多型検査の保険承認を受けて)

2019年2月1日

特定非営利活動法人 日本炎症性腸疾患学会
理事長 渡辺  守
厚生労働科学研究 難治性疾患克服研究事業
「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班
班長 鈴木 康夫

 チオプリン製剤 (アザチオプリン・6-メルカプトプリン) の副作用の中で、服用開始後早期に発現する重度の急性白血球減少と全脱毛がNUDT15遺伝子多型と関連することが明らかとされています1)2)。このたび平成31年2月よりNUDT15遺伝子多型検査が保険承認となっており、初めてチオプリン製剤の投与を考慮する炎症性腸疾患 (潰瘍性大腸炎、クローン病) 患者に対しては、チオプリン製剤による治療を開始する前に本検査を施行し、NUDT15遺伝子型を確認の上でチオプリン製剤の適応をご判断いただきたいと思います。現在は保険承認後の移行期であるため、各施設においては検査体制の整備をお願いします。日本人の約1%に存在するCys/Cys型の場合は、重篤な副作用 (高度白血球減少、全脱毛) のリスクが非常に高いためチオプリン製剤の使用を原則として回避してください。Arg/Cys, His/Cysの場合は低用量 (通常量の半分程度を目安とする) からの使用開始をご考慮願います3)。これらの副作用のリスクが低いArg/Arg, Arg/His型の場合であっても、チオプリン製剤の副作用のすべてがNUDT15遺伝子多型に起因するものではありませんので、使用に際しては引き続き定期的な副作用モニタリングをお願いいたします。

NUDT15遺伝子
検査結果
日本人での
頻度
通常量で開始した場合の副作用頻度チオプリン製剤の
開始方法
急性高度白血球減少全脱毛
Arg/Arg81.1%稀 (<0.1%)稀 (<0.1%)通常量で開始
Arg/His
Arg/Cys17.8%低 (<5%)低 (<5%)減量して開始
Cys/His<0.05%高 (>50%)
Cys/Cys1.1%必発必発服用を回避
  1. Yang SK,et al. A common missense variant in NUDT15 confers susceptibility to thiopurine-induced leukopenia. Nat Genet. 2014 Sep;46(9):1017-20.
  2. Kakuta Y, et al. NUDT15 R139C causes thiopurine-induced early severe hair loss and leukopenia in Japanese patients with IBD. Pharmacogenomics J. 2016 Jun;16(3):280-5.
  3. Kakuta Y, et al. NUDT15 codon 139 is the best pharmacogenetic marker for predicting thiopurine-induced severe adverse events in Japanese patients with inflammatory bowel disease: a multicenter study. J Gastroenterol. 2018 Sep;53(9);1065-78.
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