武田薬品工業式会社と共同で実施している臨床研究「患者中心型レジストリを活用した潰瘍性大腸炎アウトカム研究潰瘍性大腸炎における患者中心型レジストリ (YOURS)研究」の結果がJournal of Gastroenterologyに掲載されました。
本研究は京都大学臨床疫学分野とも協力して実施しています。YOURSレジストリでは、首都圏の5施設で潰瘍性大腸炎の患者を連続的に登録し、validationされた様々な患者報告型アウトカムを包括的に前向きに1年毎に3年間データを収集しています。2019年1月に2006名の患者登録が完了し、2022年6月に3年間の観察が終了しました。現在は、観察期間を2年延長して実施中です。
Title: Association of ulcerative colitis symptom severity and proctocolectomy with multidimensional patient-reported outcomes: a cross-sectional study
今回の論文は、YOURSのベースラインの横断分析であり、9つの患者報告型outcomeに対する症状的重症度または大腸全摘術の影響を包括的に調査しました。
対象となった1971 名の潰瘍性大腸炎患者のうち、1,346 名(68.3%)が寛解、583 名(29.6%)が活動性疾患を有し、42 名(2.1%)が大腸全摘術を受けていました。症状的重症度の悪化と、生活の質、疲労、不安、抑うつ、仕事の生産性の悪化との間には直線関係が観察されました。また、症状が軽度であっても、寛解している患者よりもスコアは悪化していました。大腸全摘術を受けた患者も、寛解期の患者よりスコアが悪化していました。以上の結果より、潰瘍性大腸炎の患者では、軽度の症状であっても、気分、生活の質、疲労、仕事の生産性の低下と関連しており、活動性潰瘍性大腸炎の治療により、疾患の重症度に関係なく、患者報告outcomeが改善される可能性があることが示唆されました。
PDFはhttps://doi.org/10.1007/s00535-023-02005-7よりダウンロードできます。
臨床疫学委員会
担当理事:久松 理一
委 員 長:松岡 克善